トイレに起きるだけで、睡眠は妨げられ、それが何度もあると、睡眠不足や生活に影響することは想像に難くありません。
夜間にトイレに行くことを「夜間頻尿」といいます。
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという訴えであり、そのことにより困っている状態、と定義されています(#1)。「1回以上」で頻尿に該当するんですね。2回以上ともなると、睡眠ももちろんですが、普段の生活にも支障をきたしてしまいます。
今回の記事では、睡眠不足の大敵である「夜間頻尿」の原因と対策について解説します。この記事を読めば、夜間頻尿を予防することができ、睡眠の質をぐっとあげることができますので、是非ご覧ください!
夜間頻尿の原因①夜間の尿量が多い
原因の1つ目としては、尿の量が多いことです。特に、夜間の多尿が睡眠を妨げてしまいます。夜間多尿には、24時間の尿量が多いことに伴う夜間多尿と、夜間睡眠時に尿量が多くなる夜間多尿があります。
夜間多尿を引き起こす原因として考えられるものは以下の通りです。
◎水分過剰摂取:日中水分を多量に摂取している方は要注意です。1日2リットル以上の水分を摂っている方は飲みすぎかもしれません。また、寝る前の飲酒やお茶を飲まれる方も注意した方がいいでしょう。
◎抗利尿ホルモンの低下:我々の体内では、水分量を調節する抗利尿ホルモンという蛋白質が働いています。このホルモンは、昼間尿量の増加と夜間尿量の減少を実現しています。しかし、加齢とともに、夜間の抗利尿ホルモンの分泌量が低下が認められ、高齢者の夜間多尿を引き起こす原因となっています。
◎心血管性:高血圧や心不全など、心臓疾患を患っている方は夜間尿量が増加する傾向にあります。心臓の機能が低下していると、水分を貯め込んでしまい、「むくみ」となります。この状態で夜横になると、心臓や腎臓への血流量が増えて尿量が増加し、夜間多尿を引き起こす、というメカニズムです。
夜間頻尿の原因②:膀胱に尿を溜めておくことができない
夜間頻尿の原因2つ目は、膀胱に尿を溜めておくことができないことです。膀胱の容量自体が低下すること、残尿の増加により膀胱の容量が低下してしまうこと、あるいは両者が膀胱畜尿障害を引き起こします。
膀胱畜尿障害の原因疾患のほとんどは「過活動膀胱」と「前立腺肥大」です。
◎過活動膀胱:尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴うものである、と定義されています。過活動膀胱患者の男性で56%、女性で40%が夜間2回以上の夜間頻尿が認められました。
◎前立腺肥大症:中高年男性の夜間頻尿の中で最も多い原因。前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害を呈する疾患、と定義されています。すなわち、前立腺が肥大(腫れる・大きくなる)ことにより、尿の出が悪くなり、尿量の低下と頻尿症状を引き起こします。前立腺の触診によるサイズは夜間頻尿との相関性があることが報告されています。
夜間頻尿対策
次に、今日からできる夜間頻尿対策をご紹介します。夜間頻尿で受診した患者さんに対して、対策を紹介します。
弾性ストッキング
我々の体は夕方になると、日中に摂取した水分によって下半身がむくみます。排泄されるべき水分が下半身に残っている状態ですね。夜、睡眠を取るために横になると、下半身に残っていた水分が上半身にも移動します。すると、余分な水分として、尿が膀胱に溜まり、夜の尿意として現れる、というメカニズムです。
この夕方のむくみを回避するためのアイテムが「弾性ストッキング」です。
足を上げた状態で仮眠
これもむくみ対策ですが、足を上げた状態で30分程度横になることです。眠ってしまっても構いませんが、30分以内に留めましょう。
減塩
夜間頻尿患者に対して、塩分過剰摂取がある方には塩分制限が推奨されています。塩っ辛いものを食べると、水が飲みたくなる感覚は皆さんお持ちですよね。塩分過多により、水分がふくらはぎに溜まりやすくなるともいわれています。塩分の過剰摂取は、夜間頻尿の危険因子の一つです。
夕食や晩酌の際、塩分を摂りすぎないことが大切です。寝る前の水分摂取につながってしまいます。